20年後のお堀の環境は大丈夫?~次の世代にどんな環境を残していくのか~

参加者に挨拶するICPC会長

今治港は昨年開港100周年を迎えました。開港の礎となったのは藤堂高虎が築城した今治城です。海水が引かれた広大な堀や、城内の港として国内最大級の船入を備えた日本屈指の海城でした。

このお城は今治のシンボルとして鎮座しています。しかし400年以上たったお城の環境は大丈夫なのでしょうか?20年先、50年先、100年先の環境を考えた時、まず調査を行いました。

お城の環境に興味を持つのは、まちへの愛着や誇りとなるシビックプライドに繋がります。

そしてこれからの今治を担う子どもたちに、街へ興味を持ち、これからの今治を守っていく人材になっていただきたいです。

参加者の挨拶

地方文集『うしお』に掲載された「知ってほしい今治城のこと」を芥川奏生君が皆さんの前で発表してくれました。

9月に行った、生き物観察会に参加しその時の体験を堂々と発表いただきました。

今治城のお堀の生物について 愛媛県総合科学博物館 専門学芸員:小林 真吾 

今回の調査では、ハクセンシオマネキとか愛媛でも少ない絶滅のおそれがあるカニなどが見つかっています。このカニは干潟といって潮が引いたら砂が出てくるところに生息しています。
また、海でも湾になっている内湾の環境にいる生物、それから藻場といって海の中に植物が生えている所にいる隠れている魚などが観察されました。今治城のお堀は内湾、藻場、干潟がミックスされた環境というのがいろんな生き物からわかってきました。
そして貝の仲間も多い。アメフラシやウミウシがこれだけ見られる所はなかなかないんじゃないかな。すごい貴重な環境だと思います。

水中ドローンで実際のお堀の中はどうなっているのかを子どもさんにみてもらいました。

ダイバーの方に実際にお堀のそこの泥を取ってきてもらい、触ったり、匂ったり体感してもらいました。

泥を触る子供

お堀の泥の調査で分かったこと 藤原 陽一郎 水草研究会会員/愛媛植物研究会会員

今治城のお堀の中は泥が積もっていて、少しでもかき乱してしまうと、すぐに濁ってしまうので、ダイバーの人たちは苦労したそうです。また、泥はどぶ臭い臭いがしました。これは、泥の中に硫化物が含まれているからです。硫化物が多いと泥の中から酸素が失われます。これは、生きるために酸素を使う生き物が住みにくいことになります。硫化物とCODsedの分析結果はあまり一致しませんでした。CODsedは泥の中の成分がどれだけの酸素を使うかの数値です。大きいほど酸素
を使う生き物が住みにくいことになります。
 全リンの分析結果とCODsedの分析結果は一致しています。泥の中にリンが多いと微細藻類が大量発生しやすくなります。微細藻類が大量発生すると酸素をたくさん使います。中には毒を発生させるよう
な微細藻類もあります。
 泥の深さは、お堀の中央ほど深い傾向ですが、外周や犬走りのあたりでは深さがまちまちです。石垣から2m離れた場所で泥を採取してもらいましたが、石垣を直す工事や、歩道や犬走りから砂が入った
場所があるようです。砂が多い場所はヌノメアサリが住んでいて、アサリなどの二枚貝は泥の中に潜ることで、酸素を供給します。また、水中の有機物をエサにするためCODsedの数値を下げる働きもします。